『蓄電池』は常時充電状態になっており、非常時又、必要な時に作動しなければなりません。
触媒栓の有効期限がきれたままの使用や、充電電圧の異常は電解液不足や充電不足を招き、蓄電池に著しいダメージを与えます。
 定期点検や日常の自主点検を行い、必要な時に必ず作動出来るように日頃からの注意が必要です。


電圧測定

比重・液温測定


内部抵抗測定


表面温度測定


据置蓄電池の種類

鉛蓄電池


据置蓄電池の種類

直流電源装置・アルカリ蓄電池





1.据置蓄電池の寿命
据置蓄電池寿命は使用条件、保守条件など外部要因によって大きく左右されます。
浮動充電・トリクル充電で長期間使用していると各構成部品の劣化が進行し、蓄電池容量も低下してきます。
 据置蓄電池の容量は80%以下に低下すると、その後加速度的に容量が減少するために据置蓄電池の寿命は、定格容量の80%になったときを目安にしています。
又、蓄電池の各構成部品の変形や劣化でも、蓄電池容量以外の要因で寿命に至ることもあります。

2.据置蓄電池劣化の主要因
(1) 据置鉛蓄電池 (液式蓄電池)
 劣化の主要因は陽極板と陰極板にあり、陽極板の格子又は心金(鉛―アンチモン系合金)は徐々に腐食され、その際アンチモンが鉛の腐食(二酸化鉛)とともに電解液中に溶出し陰極板に析出します。
そのため陰極板の水素過電圧が低下し、充電電流を増加することになり陽極板の腐食が増進するサイクルパターンが寿命末期まで継続します。
陰極板に析出したアンチモンは自己放電量を増加させ、各セルにバラツキを生じさせるために、据置鉛蓄電池は一定期間での均等充電が必要となります。

(2) 制御弁式据置鉛蓄電池 (密閉形蓄電池)
 陽極板格子が徐々に腐食され導電部分の減少や格子の伸びによって陽極活物質との密着性が低下し、
これによって有効活物質が減少し容量が低下します。
充電中に発生した酸素ガスは陰極板に吸収されるために密閉形蓄電池に触媒栓が必要無いのです。

(3) 据置アルカリ蓄電池
 @ ポケット式アルカリ蓄電池
  陽極活物質には活物質間の導電性を保持するため導電材が添加されており長期間の使用により陽極から発生する酸素により酸化し活物質間の導電性が悪くなり、活物質が不活性化して容量が低下します。
 A 焼結式アルカリ蓄電池
  陽極板は焼結基盤が腐食することで活物質間の導電性が低下するため不活性化し容量が低下します。
陰極板はカドミウムの結晶が成長して充電電圧が上昇し、充電されにくくなるため陽極活物質が不活性化して容量が低下します。
セパレーターは電解液中で酸化され、酸化カリウムを増加して蓄電池特性や寿命に悪影響を及ぼします。

3.据置蓄電池の環境条件
 据置蓄電池の設置条件には、温度・湿度・気圧・雰囲気等がありますが、性能、寿命に大きな影響を与える要因は温度です。
据置蓄電池は温度依存性が高く、温度が高くなると蓄電池の劣化を促進し短寿命となり、低いと化学反応が暖慢となり蓄電池容量の低下となります。
蓄電池の寿命は温度が10℃高くなると寿命が半分になるので、適正な温度管理が最重要といえます。


触媒栓式シール型据置鉛蓄電池の劣化

蓄電池の劣化状況を目視確認。

《据置鉛蓄電池の期待寿命は5〜7年/25℃》
極板の湾曲

寿命期になると確認されます。
陽極格子の腐食による体積膨張で極板が伸びてきています。
周囲温度が高いと劣化も促進されます。
                      適温:25℃以下/通年


封口部(コンパウンド)の膨らみ・亀裂

陽極板の格子体が伸びにより下から押し上げます。
亀裂が発生し内部ガスの放出までに至ると、触媒栓の還元機能と防爆機能が損なわれ、電解液べりの原因や架台周辺機器への腐食などの悪影響を及ぼします


極板のハクリ

経年劣化が進行してくると、確認されます。
腐食による陽極柱や陽極板の剥離で、極板内部でも同様に腐食が進行していて、浮遊する活物質は内部短絡の原因にもなります。充電電圧が低い場合や比重が高い場合
                     更に、周囲温度が高いと促進されます。


陽極板の亀裂

寿命末期に、確認されます。
極板の面積が小さくなり容量が減退します。
※白く変色しているのは陽極板の内部短絡によるものです。


極板劣化状況
触媒栓式シール型据置鉛蓄電池はひな壇架台では手前1列しか目視確認が出来ませんが、寿命期には1セルでも亀裂・剥離が確認した場合には全セル同じと認識が必要です。

劣化極板の拡大
陽極板(黒)と陰極板(白)の亀裂・剥離が著しい。


端子の腐食

封口部の亀裂や触媒栓の還元能力低下又、ゴムパッキンの硬化などにより酸霧の外部放出や、電解液が付着し端子等に腐食を生じさせる事があります。
接触不良や焼損、ときには誘爆の原因になります。


CS形蓄電池正極板のクラッドチューブの破損

CS形蓄電池では、長期使用によってクラッド式極板(正極板)の芯金が浮動充電電流により電解酸化され腐食が進行し芯金の導電部の断面積が減少します。著しく腐食の進行した部分では結晶粒界に腐食が侵入し極板の強度が低下します。
芯金(金属:鉛合金)は腐食によって元の鉛から腐食物(主成分は二酸化鉛)に変化する際に約1.3倍の体積膨張が起こります。
通常は、ガラスチューブはこの体積膨張を抑え込み活物質の脱落を防いでいますが、極板群に振動が加わると極板が変形するとき等に応力が加わり破損に至ります。
CS形据置鉛蓄電池の期待寿命は10〜14年/25℃


電解液の液涸れ

触媒栓の有効期限超過や封口部の亀裂から、外部へガスが放出し電解液減りが発生します。
液涸れ状態で極板露出となると、ダメージも致命的となり寿命に達してしまいます。


内部短絡

内部劣化により、陽極・陰極間で内部短絡が発生する事があり、電解液が加熱され温度上昇と共に、急速的に液涸れを生じます。
液が無くなった状態で発生すると、水素ガスに引火の危険性があり非常に危険です。



触媒栓

触媒栓には、有効期限があります。

『触媒栓』は電解液の減少を
抑えるだけではありません!


@ 還元機能
蓄電池から発生する水素ガスと酸素ガスを触媒により
化学的に結合させ水にもどし電解液の減少を抑制する。

A 蓄電池の内圧調整機能
  蓄電池の過大電流通電等の急激なガス発生量の増加に対し、触媒栓内部の排気パイプを経て外部に放出し、内圧を一定に保ちます。

B 防爆機能
  放電中に発生する酸霧をフィルターで除去し周囲に火花(リーク等)があっても、上部にある防爆フィルターにより引火や誘爆を防ぎます。


触媒栓有効期限超過
触媒栓を有効期限が切れたまま使用すると、蓄電池内部に発生する水素・酸素ガスを水へ還元する能力が無くなり、外部へ直接ガスが放出されます。
周囲温度により触媒栓や周辺へ付着し結晶化します。


触媒栓のゴムパッキン劣化

触媒栓も経年劣化によりゴムパッキンが硬化します。
密閉性が薄れ、内部ガスの放出となります。


制御弁式据置鉛蓄電池の劣化

制御弁式据置鉛蓄電池は密閉式な為、経年劣化現象の確認は目視では難しいのです。

制御弁式据置鉛蓄電池の劣化

《充電圧不良と経年劣化から内圧が低下し電槽へ亀裂発生》
制御弁式据置鉛蓄電池は、内部が目視では劣化状況が確認出来ませんが、電圧値と内部抵抗値によりある程度の判断が出来ます。その為日常点検での数値の推移と周囲の温度管理が重要となります。
制御弁式据置鉛蓄電池の期待寿命は7〜9年 長寿命形 13〜15年/25℃




不良蓄電池を解体しました。

陽極板格子が徐々に腐食され導電部分の減少や格子の伸びによって陽極活物質との密着性が低下し、極板面積減少=容量低下=不良蓄電池となります。

腐食した陽極板の拡大

陽極活物質との密着性が低下し、触れるとボロボロになります。


劣化した蓄電池は、異常発熱や破裂など、時には災害の要因にもなります。